【おさらい】オフィス移転は物件の前にまず「文書」!
前回に続いて「オフィス移転」のお話です。
さて、前回はオフィス移転を考えるなら、物件よりもまず「蓄積文書」をどう扱うかを決めていかなければならないというお話をしました。
詳しくは
「文書電子化のプロが教えるオフィス移転成功術〜前編〜」をご覧ください。
今回はその後編。社内に蓄積されている紙文書をどうしていくべきか。オフィス移転をする前に、この問題をきちんと整理しておかないと、文書のために広いオフィスを調達せざるを得ないということも……。
オフィス移転は物件探しの前に、まず「文書管理プランニング」。では、具体的にどう進めていけばよいのか一緒に見ていきましょう。
保管文書の分類方法と管理ルールを決めよう
さて、前回のお話の中でご紹介した「まず把握しておくべき蓄積文書の情報」を振り返ってみましょう。
さて、この5項目。要は「蓄積されている文書は保存が必要かどうか」の判定を行うことを示しています。
こうした判定を行うためにまず行わなければならないのが、法定保存義務の有無とその期間の確認です。
ビジネスで用いる文書には、業務に対する責任を担保するため、保存義務やその期間が明確に定められています。つまり、法定保存の対象となる文書かどうか、またその期間が過ぎているかどうかが保存すべきかどうかの判断基準となります。
ではここで、どのような文書をどれくらい保存しておくべきなのか確認してみましょう。
主要文書の法定保存期間
皆さんのお手元にある文書がどれに当たるのか、まずは確認してみましょう。
主要文書と法定保存期間の一例
法定保存期間 | 分類 | 文書名 |
永年
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総務書類 | 定款 株主名簿、原簿類 登記・訴訟関係書類 許可書・認可書、通達等重要書類 知的所有権関連書類 社規・社則 会計監査に関する文書 特許書類 など |
人事書類 | 重要な人事に関わる書類 労務・人事・給与・社会保険関係書類 労働協約関係書類 など |
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経理書類 | 決算書類 株式増資関連書類 固定資産関連書類 など |
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30年 | 人事書類 | 労働者の作業概要などの定期記録 上記労働者の特定化学物質等健康診断個人表 焼却施設等作業の記録 放射線業務従事者の健康診断記録 など |
10年 | 総務書類 | 重要会議の議事録 満期または解約となった契約書 製品の取引に関する記録 損害保険関連文書 など |
経理書類 | 計算書類および附属明細書 会計帳簿関連重要書類 財務関係書類 など |
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7年 | 経理書類 | 取引帳簿 決算書類 取引証憑書類 電子取引の取引情報に関わる電磁的記録 給与・扶養・保険料・控除関連文書 資産の譲渡や課税仕入、課税貨物の保税地域からの取引に関する帳簿 源泉徴収簿 など |
5年 | 総務書類 | 事業報告 事業に関連する証券関連文書 契約期限のある覚書、念書、協定書 診療録(カルテ) 産業廃棄物管理表 など |
人事書類 | 従業員の身元保証書 誓約書など 雇用保険の被保険者に関する書類 など |
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経理書類 | 監査書類 金融機関等が保存する退職等に関する通知書 監査役の監査報告書 退職等に関する通知書 海外転勤者の財政形成非課税住宅貯蓄継続用申告書、海外転勤者の国内勤務報告書などの写し など |
上記は一般的企業が運用する文書の法定保存文書の一部です。当然、これが全てではありませんのでご注意ください。
法定保存期間を経過していない文書は廃棄することはできません。逆を言えば、法定保存期間が経過している文書については、その原本を破棄しても構わないということなのです。ここが文書量を削減していく根拠となるため、管理者は法定保存期間についてしっかりと把握しておくことが重要です。
ここに掲載しているのは一部ですが、ジーベックでは各文書の法定保存期間一覧をご用意しています。「ほしい!」という方はぜひ当記事の終わりにあるお問い合せバナーからお問い合せください。
文書管理を行うルールを決める
破棄して良い書類と、保存しなければならない書類が分類できたら、いよいよ管理ルールの策定です。まず、どんな手順で進めていくのかを見てみましょう。
文書管理ルールはこのような手順で策定していきます。では一つずつ詳しく見ていきましょう。
①部門内ルールを決める
社内で保管・運用している文書は、同じ文書でも部門ごとに活用方法が異なる場合がほとんどです。このため、最初からひとつのルールを作ろうとしても条件が合わずうまく行かないことが多いのです。
こうした状況を回避するため、まずはそれぞれの部門ごとに運用ルールを決めてしまいましょう。文書を扱うのは、常に現場です。実は、その現場がうまく回るルールを優先して作っておくことは非常に重要なことなのです。
とはいうものの、部門内ルールは日々の使いやすさを重視したり、「管理のプロじゃないからわからない」という言い訳のもと、曖昧なルールや甘いルールを策定しがちになります。こうなると、ルールが効果を発揮しにくくなります。通常保管はどうするか、閲覧するときはどうするか、閲覧中はどう周知するか、デスクに持ち帰って良いのか……などなど。「保管状態」、「運用(閲覧)状態」、担当者がデスクに持ち帰ったりする「保持状態」、文書を返す「返却」などのルールを明確に定めていきましょう。
②共通項から「全体ルール」の骨格を作る
部門ごとのルールが決まったら、それを持ち寄り「共通項」を洗い出します。このフェーズでは全部所で策定された部門ルールを並べ、【1】共通している項目と、【2】共通化できる項目を整理していきます。
【1】共通している項目
たとえば、「保管文書は社外持ち出し禁止」など。全部署共通のルールを洗い出し、必要なものを全社ルールに格上げしていきます。
【2】共通化できる項目
こちらは全部門に共通していなくてもかまいません。「ある程度の部門のルールに同じような項目があり、全部門化しても不利益が発生しにくいもの」を前提に項目を洗い出し、全社ルールとして整備・格上げしていきます。
この作業で見えてくる項目こそ、皆さんの会社の「全社ルール」の骨格です。
あとはこの骨格項目に付随する項目に対して、ルールの肉付けを行っていくのです。こうすることで最初の全社ルールのあらましを決定します。
ここで注意しなければならないのが「最初から完璧なものにはならない」という姿勢です。
ルールは会社の状況や文書の運用方法によって変化・調整が必要です。定期的に見直し、ブラッシュアップしなければなりません。今回のルールをもとに、次回の改定でさらに良いルールにしていく。この姿勢を絶対に忘れてはなりません。
③文書管理実務の要件を定め「文書分類基準」を整理する
さて、これで各部門のルールと全社ルールのあらましができました。次は文書の「管理」に関する要件を定めて行きます。できた骨組みに、具体性のある肉付けを行っていく作業です。
このフェーズでは各種条件を策定し、最終的には「文書分類基準」の作成を行います
「文書分類基準」とは、業務で使用する文書の分類を整理・一覧化したものを言います。この一覧の制作目的は「目的の文書がすぐに探すことができる状況」を実現するために制作するものです。
イメージ的には以下のようなものを整理・一覧化していきます。
「文書分類基準」のうち、①〜④はそのまま文書保管庫などの保管場所情報です。
⑤は法定保存期間を大前提にした保存期間。
⑥機密区分とは部外秘なのか社外秘なのか、といった気密性レベルの指標。
⑦文書作成単位とは累積文書として恒常的に作成・増加させていく文書なのか、年度ごとなど定期的に増えていく文書なのかなどを示す項目です。
そして、最も馴染みのない項目が⑧リテンションパターンと⑨リテンションスケジュールではないでしょうか。
リテンションとは「保持・維持」といった意味。つまり「リテンションパターン」とは「どのように(どこで)保存するか」という意味の項目ということになります。この場合、たとえば「金庫」や「〇〇番文書庫」といった社内保管庫であったり、外部の倉庫を借りている場合は「○○倉庫」といった形になります。
一方「リテンションスケジュール」はおわかりの通り「保存期間」を指す項目となります。これは法定保存期間を前提に、該当文書をどう扱って行きかを記載していきます。
こうした基準を文書ごとに整理し、台帳化することで各文書のコンディションと保存環境を維持していくことが「文書管理」の基本となるのです。
「文書分類基準」は電子化時にも効果を発揮
さて、ここで思い出したいのが「電子化」です。「文書分類基準」を見てみると、どうも紙文書のころに設計された整理方法のように見えてしまいます。
でも、安心してください。この「文書分類基準」は電子化した文書の管理にもそのまま活用できるのです。
たとえば①「大分類」から③「小分類」といった分類構造は、そのまま「フォルダ構成(=ディレクトリ構成)」として適用することができます。
また、④文書名の項目では、文書ファイルの命名規則などを設定することで、管理効率を向上させることができます。
⑨リテンションスケジュールでも、ファイルの削減判断基準を策定し、明記しておくようにしましょう。このようなコンディション調整を行うことで、電子化したファイルと紙両方を管理する事ができる基準表とすることができます。文書管理を行う担当者となってしまった方は、こうした文書分類基準をきちんと整理し、整理方法をきちんと保存・継承していくことがポイントとなります。
また、より細かく整理するために「大分類」から「小分類」までの階層が複雑化していくことがあります。こうなると目的の文書(ファイル)を探しにくくなったり、どこに保存したらいいのかわかりにくくなってしまいます。やはり三階層程度に抑えるのが無難だと言えるでしょう。
残す文書と廃棄する文書
さて、これで一通りの「文書保存のルール」ができました。
ここからは実際にいま目の前にある文書をどう扱うかを検討します。つまり、不要な文書の廃棄方法の決定と、残す文書の保管方法の決定です。
廃棄文書はすべて機密扱いで
これまで確認してきた法定保存期間などに照らし、不要と判断された文書は廃棄していくことになります。
でも、すぐに廃棄してはいけません。
企業に保管されている文書には、個人情報や営業秘密情報など事業継続のために必要となる重要情報が多数含まれていると考えられます。いいえ。むしろ「すべての廃棄文書=機密文書」として取り扱わなければなりません。
「廃棄するのにそこまで気を使う必要がある?」なんていう声が飛び出すかもしれません。でも、そこは毅然として「ダメ」と明言しなければなりません。
文書管理を行う部門が死守すべきは安全です。廃棄文書を機密文書と位置づけ、機密文書廃棄を提供する業者にきちんと委託することが必要です。また、廃棄後には廃棄証明書の発行が可能かどうかも確認しておきましょう。
紙で残すか電子化するか
廃棄しない文書については、紙で残すか電子化するかの二択になります。
法定保存義務がある文書のうち、永年原本保存義務がある特許書類や訴訟関係文書などは「原本そのまま」で保存しなければなりません。
その他は原則として電子化してOKです。
2022年5月に掲載した『「電帳法」改正! 求められるペーパーレス革命』でお伝えしたとおり、今年から施行された改正電子帳簿保存法により、紙文書のスキャン保存に係る法的要件が大幅に緩和されたのです。これを機に保管文書のペーパーレス化し、DX実現を推し進めていくべきでしょう。
だいぶ長い道のりでしたが、ここでやっと「電子化」にたどり着きました。「電子化」を実現することこそ、省スペース化……ひいてはオフィスの引っ越し・省コスト化を実現する具体的方法なのです。非常に手間がかかる道のりです。でも、この記事でご紹介したステップをきちんと昇華していくことで、本当に必要なオフィスの規模が明らかになるのです。
面倒ならぜひジーベックにご相談ください
社内で保管されている文書の取り扱いは、これほどまでに大変な作業です。文書量の把握から分類整理、保存計画の立案など。慣れない作業に加え、本業との兼ね合いがある皆さまにとって、文書関連のプランニングは非常に大変な作業であることは間違いありません。また、「電子化」にはさまざまなノウハウが必要です。単純にスキャナを通せばよいというものではありません。むしろ、ステープル(ホチキス)で綴じてあることもしばしばです。文書量と、こうした作業量。それぞれの知識がなければ、適正な見積もりもできません。文書管理のプランニングと電子化にまるごと対応できる会社は、そう多くは無いのです。
その一社であるジーベック株式会社は、文書管理計画や機密文書の取り扱いに長けた専門業者。国際訴訟における証拠文書電子化(=eディスカバリー)にも対応してきた企業です。皆さまの会社内に保管されている文書の保存・管理計画や電子化についてのご相談・お見積りはぜひジーベックにご一方ください。